前回に引き続き、ハウス建設時の考慮ポイントです。
今回はハウス内の設備・装備です。
ハウスにはいろいろな設備を付けることができます。
それぞれ、数万円~数十万円掛かるので、必要なものを選んで設置したいものです。
天窓・換気扇・妻面の窓
これを付けると、夏場の熱気を逃がすことができます。
天窓はハウスの天井部分に付ける窓で、数メートル程度開くものから、ハウス全体に渡り開くものまであります。
熱気は上昇するので、天窓を開けるとムワっとした空気が抜けていきます。
ただし、その換気量は上昇気流まかせです。
妻面に換気扇とシャッターを付けると、上がりすぎた気温を下げる(外気と同じレベルまでですが)ことができます。
天窓と違い、ファンを回すことで強制的に空気の流れを作って熱気を逃します。
なお、換気扇は基本的に排気方向です。換気扇の反対側の妻面に付けられたシャッターが吸気側となります。
妻面の窓は、妻面の入口上部に取り付ける窓です。
これは風の流れでハウス内の空気を出し入れするので、換気の量は少ないと思います。
サイドの自動巻き上げ機
温度によって、自動でサイドの巻き上げを開閉してくれる装置です。
朝晩の開閉を自動でやってくれますし、日中、気温が上下した場合もそれに合わせて自動で開閉してくれます。
夏はハウスを閉めっぱなしだと、すぐに40~50℃を越える灼熱の空間になります。
なので、自分がいなくても勝手に開閉してくれる装置は助かると思います。
循環扇
ハウス内の空気を循環させるファンです。
湿気た空気が停滞していると、カビや病気が発生する場合があります。
循環扇はハウス内の空気に流れを作ることで、カビや病気の発生を抑えることができると言われています。
内張(うちばり)
ハウスの中をさらにビニールで囲い、作物への温度低下を防ぐのが内張です。
冬の間、少しでも気温の低下を防ぎたい場合は、非常に有効です。
とはいえ葉物野菜は低い温度にも耐えるため、あまり必要ではありません。
妻面の内張は、やり方がいくつかあるようです。
ひとつはカーテン方式。
密閉度は低いですが、開閉がラクです。
もう一つは妻たらし方式。
パッカーで留めてある分、密閉度は高いです。
しかし、開けたい場合、マイカー線などで縛るだけなので手間な上に、完全に開き切りません。
晩は内張を張るけど、昼間は開けておきたいような季節の場合、毎日開け閉めが発生します。開閉の手間はなかなか大きな差になると思います。
温風暖房機
ハウスの中を温風で温める、巨大な暖房機です。
これがあれば、真冬でも夏の野菜を栽培することができます。
問題はコストです。
重油や灯油を燃やして温風を作り出すため、燃料代がもの凄く掛かります。
それに見合うだけの収益を上げられるのであれば、導入する価値はあると思います。
CO2発生装置
植物が生長する際には光合成が行われます。
密閉空間であるハウス栽培では、光合成する度にハウス内のCO2濃度が下がります。CO2濃度が下がると、光合成のスピードも低下して生長にも影響します。
これを防ぐためにCO2発生装置でCO2を供給して、生長を促そうというものです。
効果は高いそうです(聞きかじった話です ^^;)。
これを取り付ける場合は、CO2濃度を測定するセンサーも必要になります。
灌水設備・井戸
ハウス内に灌水するための水は、主に農業用水・井戸水・市水(いわゆる水道水)から引くことになると思います。
農業用水は、ため池などから溝やパイプラインを通って、ほ場へ流れてくる水です。
水質は、ため池と同程度なのでキレイなことは少ないと思います。
フィルターでゴミを除去しないと、灌水チューブやシャワーヘッドなどはあっという間に詰まると思います。
井戸水は、ほ場もしくはその近くに井戸を掘り、ポンプでくみ上げた水です。
水質は井戸の深さによりバラバラです。
井戸が浅い場合(10mくらい)でも井戸水は出るようですが、地表から染み込んだ物質(肥料成分や堆肥の成分など)が含まれていることもあります。
この場合、灌水には使えますが、野菜を洗ったりするには問題があるかも知れません。
深い井戸にすると、何層も下の地下水層から採れるため、水質は上がります。
もちろん深く掘る方がコストはどんどんと上がります。
「20~30万円で井戸は掘れる」という話は、恐らく浅い井戸の話と思います。
井戸を掘る場合の料金は、掘る深さ(メートル)×2万円と聞きました。50メートル掘ると100万円です。ポンプや配管の工事代が別途要ります。
市水で灌水すると、水質は抜群に良いため、灌水チューブが詰まる心配が無くフィルターも不要になり、労力を減らすことができます。
野菜を洗う場合も、水質を気にする必要はまったくありません。
ただし、水道代はかなり掛かります。
また、塩素が含まれているので、作物によっては根が傷むそうです。
これら(農業用水・井戸水・市水)の水をハウス内で灌水する訳ですが、水圧が足りなければローリータンクを置いて、その中に水を一旦溜めて、ポンプで水を流す必要があります。また液肥を混入させて灌水する場合は、液肥混入器も必要になります。
こういったローリータンクやポンプ、液肥混入器を置いておく場所も必要になります。
ほ場の隅に灌水設備一式を置いた小さなビニールハウスを建てる場合もあるようです。
電気
換気扇やサイドの自動巻き上げには電気が必要です。
それ以外にも、ハウスに電気があるといろいろ便利です。
照明・灌水タイマー・温度センサー・監視カメラ・スマートフォンの充電etc..
休憩用に小さな冷蔵庫を置いている人も、ちらほら見かけます。
電線がほ場へ延びている場合はいいですが、無い場合は電力会社に頼んで電線を張ってもらう必要があります。
確か、電線を張ってもらうのは無料ですが、それを繋ぐほ場側の電柱などはこちらの負担のはずです。
電気には家庭用100Vと三相200Vがあります。
たいていの機器は100Vで動きますが、ハウス用の換気扇や電動ポンプは200Vの機器もありますので、必要に応じて片方または両方の契約が必要になります。
ベンチ・支柱
イチゴの高設栽培では高設ベンチ、トマト栽培ではコの字パイプなど、いろいろと資材が必要になります。
ハウスの大きさが決まれば、自ずとこれらの資材の必要数も判ります。
ハウス全体に敷設するには、かなりの必要数になるので、資材の値段も結構掛かります。
苗床
作物を育苗から始める場合、苗を置いておく場所が必要になります。
また、寒い季節では温床マットなども必要になります。
ハウスの片隅を育苗エリアにする方法もありますが、規模が大きくなってくるとハウス1棟を育苗用にする方もいるようです。
思いつくままにハウス内設備について書いてみましたが、これも十人十色で皆さんそれぞれ必要なものが違います。
ハウスを建てる際は、いろんな人の意見を聞いてみてください。